心房細動は「放っておいていい病気」ではなくなりました
心房細動は「放っておいていい病気」ではなくなりました
こんにちは。今日は、**心房細動(しんぼうさいどう)**について、ぜひ知っておいていただきたい大事なお話をします。
心房細動とは、脈が不規則で速くなる「不整脈」のひとつです。動悸や胸の不快感を引き起こすこともありますが、それよりも怖いのが、心房に血のかたまり(血栓)ができ、それが脳に飛んで脳梗塞を起こしてしまうことです。
昔の考え方:血栓を防げばいい。不整脈は放っておいていい。
これまでの心房細動の治療では、最も大事なのは「脳梗塞を防ぐこと」とされてきました。そのため、抗凝固薬というお薬を使って血栓を予防することが治療の中心でした。
そして、不整脈そのものを治すお薬(抗不整脈薬)は副作用の心配もあり、使わないことが多かったのです。
つまり、「抗凝固薬さえ飲んでいれば、不整脈(心房細動)自体は放っておいてもよい」という考え方が一般的だったのです。
でも、今は考え方がまったく変わってきています。
最近の研究や治療の進歩によって、心房細動を放っておくと心臓そのものが傷んでしまうことが分かってきました。
心房細動が続くと、心房が少しずつ広がり、形が変わってしまう「リモデリング」という変化が起こります。そうなると、心臓の働きが弱まり、心不全という深刻な病気につながってしまうのです。
このような悪循環を防ぐために、今では心房細動を「治す」こと自体がとても大切とされています。
今の治療:アブレーションで正常な脈に戻す
そこで登場するのが、カテーテルアブレーションという治療法です。
これは、特殊な細い管(カテーテル)を血管から心臓に入れ、不整脈の原因となる部分を焼いて治療する方法です。
この治療により、心房細動が止まり、脈が正常に戻るだけでなく、**広がってしまった心房が小さく戻る「リバースリモデリング」**という良い変化も起きることが分かっています。
そして重要なのは、この効果は「早め」に治療した人ほど大きいということです。
心房細動が長く続いてしまうと、心房は元に戻りにくくなってしまいますし、そもそも心房細動自体が正常の脈に戻りづらくなってしまうのです。
昔は「放置でもよい」、今は「積極的に治す」時代へ
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昔の治療:抗凝固薬を飲んで血栓を防げばOK。不整脈そのものは止めなくてもよい。
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今の治療:抗凝固薬による予防に加えて、心房細動を治すことが大切。早期のアブレーションが推奨されるようになった。
心房細動は、放っておくと命に関わる病気につながる可能性があります。
でも、今はよい治療法があります。そして、早ければ早いほど、心臓にとっても未来にとってもプラスになります。
もし、心房細動と診断された方や、不整脈・動悸が気になる方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。
心房細動は、「様子を見る」時代から、「治す」時代へと変わっています。