お腹が出てきたは危ないサイン?
肥満と心臓
― 体重より「お腹まわり」を気にしてほしい理由 ―
「体重はそこまで増えていないのに、最近お腹だけ出てきた…」
実はこの状態、心筋梗塞・脳卒中・心不全と深く関係していることが分かっています。
これまで肥満の指標といえば体重やBMIでしたが、
最近の研究でははっきりと、
👉 体重よりも“腹囲(お腹まわり)”のほうが、心血管リスクをよく反映する
ことが示されています。
体重より腹囲が大事、という科学的データ
世界52か国・約27,000人を対象にしたINTERHEART研究では、
BMIよりも腹囲や腹囲/臀囲比(WHR)のほうが、心筋梗塞の発症と強く関係していることが報告されました¹。
特に注目すべきなのは、
-
体重は標準でも
-
お腹まわりが大きい人では
-
心筋梗塞のリスクが明らかに高い
という点です¹。
さらにその後の解析でも、腹囲は
心血管イベントや心血管死亡と「一直線」に相関し、
BMIを考慮してもこの関係は消えないことが示されています²。
「体重は普通だから安心」ではなく、
「お腹まわりを見ないと分からないリスク」がある
ということです。
「体重は普通だけどお腹が出ている人」が一番危ない?
2015年の研究では、
BMIが正常なのに腹部肥満がある人は、
-
BMIが高くても腹部肥満が少ない人より
-
心血管死亡リスクが高い
という、少し意外な結果が示されました³。
いわゆる
👉 “隠れ肥満”タイプは、決して安全ではない
ということです。
腹囲=内臓脂肪
見えない脂肪が、じわじわ心臓を傷つける
腹囲が増える最大の原因は、内臓脂肪です。
内臓脂肪は
「余った脂肪」ではなく、
炎症を起こす物質やホルモン様物質を出す、かなり活動的な脂肪です。
内臓脂肪が心臓・血管に悪さをする仕組み
① 血管の中で炎症が続く
内臓脂肪から出る炎症性物質は、
血管の内側をじわじわ傷つけます。
その結果、
-
動脈硬化が進み
-
血管がもろくなり
-
心筋梗塞や脳卒中が起こりやすくなる
ことが分かっています⁴。
② 血糖・脂質・血圧がまとめて悪化
内臓脂肪が増えると、
-
血糖が下がりにくい
-
中性脂肪が高い
-
血圧も上がりやすい
という変化が同時に起こります。
これがメタボリックシンドロームの本質です⁵。
③ 心臓そのものにも影響
最近では、内臓脂肪や心臓の周りの脂肪が、
息切れが主症状の心不全にも関係していることが分かってきました⁶。
体重が減らなくても、腹囲が減れば意味がある
大事なポイントです。
内臓脂肪は、体重より先に減ります。
-
お腹まわりが少し細くなった
-
ベルトの穴が1つ内側になった
-
ズボンが楽になった
これだけでも
👉 心血管リスクは確実に下がっています。
ここで少しだけ、SGLT2阻害薬の話
最近よく使われるようになったSGLT2阻害薬は、
「血糖を下げる薬」というイメージが強いかもしれません。
ですが実は、
👉 内臓脂肪を減らす方向に働く
ことが研究で示されています⁷。
なぜ内臓脂肪が減りやすい?
-
尿に糖を出すことで、軽いエネルギー不足状態になる
-
体が脂肪を使うモードに切り替わる
-
代謝の活発な内臓脂肪から先に燃えやすい
と考えられています。
さらに、
インスリンが下がることで脂肪が溜まりにくくなり、
内臓脂肪の炎症が落ち着くことも報告されています8。
「体重はあまり減らないのに、お腹がへこむ」
SGLT2阻害薬では、
-
体重減少は2〜3kg程度
-
でも腹囲はしっかり減る
ということがよくあります。
これは
👉 皮下脂肪よりも、内臓脂肪が優先的に減っている
ためです。
心臓・血管にとっては、
かなり意味のある変化です。
心不全・心血管イベントが減る理由ともつながる
SGLT2阻害薬が
心不全入院や心血管死を減らす理由のひとつとして、
内臓脂肪や心臓周囲脂肪の改善が関与していると考えられています9。
お腹がへこむ
↓
炎症が減る
↓
血管と心臓が守られる
という流れです。
当クリニックの考え方
私たちは、
-
とにかく体重を落とす
-
数字だけを見る
診療は行っていません。
腹囲・内臓脂肪という「本当に大事なリスク」に目を向け、
将来の心筋梗塞や脳卒中を防ぐことを大切にしています。
薬を使う場合も、
「痩せるため」ではなく
体質とリスクを改善するために選択します。
こんな方は、ぜひ一度ご相談ください
-
体重は普通だけど、お腹が気になる
-
健診で腹囲や中性脂肪を指摘された
-
血糖・血圧・脂質が少しずつ悪化している
-
心臓の病気が将来不安
何も起きていない今こそが、いちばん大切なタイミングです。
参考文献
-
Yusuf S, et al. The Lancet, 2005
-
Wormser D, et al. The Lancet, 2011
-
Sahakyan KR, et al. Ann Intern Med, 2015
-
Després JP. Circulation, 2012
-
Matsuzawa Y. FEBS Letters, 2006
-
Packer M. J Am Coll Cardiol, 2018
-
Bolinder J, et al. Diabetes Obes Metab, 2012
-
Mudaliar S, et al. J Clin Endocrinol Metab, 2016
-
Verma S, McMurray JJV. Circulation, 2018